突然、親友が死んだ

 

 

 

 

先日、親友の7回忌があったんだ。

 

やっと気持ちの整理がついたから、少し語らせてくれ。

 

 

それを知ったのは1本の電話だった。

 

 

満 「……」

オレ「おぅ、満(みつる)。」

満 「……」

オレ「どうした?なんかあったのか?」

満 「……」

オレ「大丈夫か?」

満 「あのさ……」

オレ「ん?」

満 「聡(さとし)、死んだって」

オレ「……」

満 「……」

オレ「は???」

満 「……」

オレ「……」

満 「聡、死んだんだって」

オレ「……」

 

オレ「な、なんだよその冗談、つまんねーぞ……」

満 「……」

オレ「……マジで?」

満 「……うん。」

オレ「……誰から聞いた?」

満 「親父。」

オレ「親父って……。お前の親父、聡と同じ職場だよな?」

満 「……うん。警察から会社に連絡あったって。」

 

 

その後の満との会話は覚えてない。

 

「直接確認する」って言って電話を切ったような気がする。

 

 

 

その後、すぐに聡の携帯に電話した。

 

 

頼む、出てくれって祈りながら……

 

 

出ない。

 

 

何度鳴らしても出ない。

 

 

 

この時、オレの携帯を持つ手は震えてた。

 

 

 

何度か留守電になったけど、何度もかけなおした。

 

 

そして、電話が繋がったんだ。

 

聡 「もしもし」

オレ「聡、聡か?なんだよ、びっくりさせるなよ。」

聡 「……」

オレ「おまえ、変な噂流れてるぞ。何したんだよ。」

聡 「……裕也(ゆうや)君だよな?」

オレ「……え???」

 

この時のオレは聡が出たと思って安心してた。

聡の声だったから。

??「俺、聡の兄貴。」

オレ「聡兄さん……。聡、聡は!!」

聡兄「……今朝亡くなった。」

オレ「……」

聡兄「……自殺だった。」

 

目の前が真っ暗になった。

 

 

 

ここでちょっと聡とオレのことについて書きたいと思う。

 

 

聡と出会ったのは高校入学の時。

 

聡はクラスメイトだった。

 

 

話すきっかけは聡の方からで、一番最初の授業の前だった。

 

 

聡 「なぁ。」

オレ「ん?」

聡 「教科書貸してくれ。」

オレ「何の?」

聡 「何でもいい。」

オレ「何でも???」

聡 「教科書見てるふりできれば何でもいい。」

オレ「あぁ、教科書忘れたのか?」

聡 「いや、鞄忘れたw」

 

こいつはバカだと思った。

 

その日の昼休み、一緒に飯を食った。

 

聡 「お前何中?」

オレ「南中。お前は?」

聡 「北中。」

オレ「北中って荒れてたって噂だけど、実際どうだった?」

聡 「あー、どうだろ? たまに窓ガラス割れてるくらいじゃね。」

オレ「……。ところで、何で鞄忘れたんだ?」

聡 「いや、中学の時鞄なんて持ち歩いてなかったから癖でw」

オレ「……」

 

やはりバカだったらしい。

 

聡はバカだったけど、気さくでいい奴だった。

 

誰とでも友達になれるタイプだった。

 

 

オレは元々人と関わるのが好きじゃなかったけど

 

聡と一緒にいたおかげで変わる事ができた。

 

 

聡がいなかったら、きっと高校で友達はできなかったと思う。

 

つまらない高校生活を送ってたと思う。

 

最初の中間テストが終わった後、聡が点数を聞いてきた。

 

 

聡 「やべー、英語の点数44点だったw。お前は?」

オレ「98」

聡 「うへw、国語は? おれ52w」

オレ「95」

聡 「うはwwwww、お前天才すぎwwwww」

 

 

つーか、最初の中間でその点数って……

 

お前バカすぎだぞ。

 

1年の夏休の時、聡が聞いてきた。

 

聡 「なぁ、お前なんで頭いいのにうちの学校なわけ?」

オレ「べつに頭良くないぞ。」

聡 「うわ、自慢かそれwwwww

中間も期末も学年トップ5入ってたじゃねーかよwwwww」

オレ「お前は下から数えた方が早かったよな。」

聡 「ひでぇwwwww」

 

聡にはオレの中学の時の話をしてもいいかと思った。

 

 

オレ「オレさ。中学の頃不良に目をつけられてたんだよ。

かなりガラの悪い奴でさ。兄貴も有名だったらしい。

向こうから勝手に絡んできてさ、オレは関わりたくなかったからずっと無視してたんだ。

そうしたら周りの奴らがどんどんオレから離れていった。

きっとオレと一緒にいて自分に被害が来るのが嫌だったんだろうな。

気づいたら1人になってたよ。

オレは人間なんてそんなもんかなと思ってた。

別に1人は嫌いじゃなかったからそれでもいいかと思ってた。」

 

オレ「そうしたらある日の放課後そいがまた絡んできてさ、

言い合いがきっかけで殴り合いになった。

そしたらそいつ仲間呼びやがるのな。

群れないと何も出来ない奴なのは解ってたけど、理不尽だと思った。

結局オレは集団でボコボコにされたよ。」

 

オレ「その後も学校には行ってた。たいした問題も起きてなかった。

でも、ある日なんか全てがどうでもよくなってな、

授業中、そいつを椅子でボコボコにしちゃったんだよね。

そいつはたいした怪我しなかったんだけど、大騒ぎになった。

先生に事情聴取されたり、親呼ばれたりした。

学校は表沙汰にしたくなかったし、お互いに問題があったって事で、たいした処分にならなかったけど。

それ以来、そいつがオレに絡んで来る事はなくなった。

まぁ、事件は学校中に広まって、危ない奴で有名人になっちゃったから、

その後誰もオレに関ろうとはしなかったけどね。

で、内申書も良くないし、南中の生徒が少ないこの学校にした。」

 

 

一通りの話を聞いた聡の感想はこうだった。

 

 

聡「お前、やるなwwwww」

 

 

聡にとってはたいした話じゃなかったらしい。

 

 

その後、北中の事件を色々聞いた。

 

聡の話も聞いた。

 

オレの話なんか大した事なかった。

 

 

聡とはこの後もうまくやっていけそうな気がした。

 

 

 

 

ある日聡が珍しく真剣な声で話しかけてきた。

 

聡 「なぁ、お前夏美(なつみ)の事どう思う?」

オレ「なんだよ。お前夏美の事好きなのかよ。」

聡 「彼氏いるのかなー?」

オレ「さぁ?夏美かわいいからな。どうなんだろうな。」

聡 「だよな!夏美かわいいよな!!」

オレ「お前の方が仲いいだろ? オレあんまり喋った事ないし、直接聞けば?」

聡 「無理無理、そんな事したら気があるって思われるじゃねーかw」

オレ「実際気があるんだから別によくね?」

聡 「お前は純粋な男心をわかってないな。」

 

 

 

そう言いながら聡は雑誌を読み始めた。

 

1時間くらいたった後、聡がまた話しかけてきた。

 

 

聡 「なぁ、ちょっと携帯かしてくれ。」

オレ「ん? いいけど変な事するなよ。」

聡 「サンキュー。」

 

 

聡はオレの携帯で何かしていたが放っておいた。

 

さらに1時間後。オレの携帯に1通のメールが来た。夏美からだった。

 

 

 

 

 

 

夏美
———————————-
ごめんなさい。

今、好きな人がいます。

裕也君とはお友達でいたいです。

———————————-

なぜかオレがフラれていた。

 

送信メールを確認した。なぜかオレが告白していた。

 

聡はこのメールを見て喜んでいた。好きな人はオレかな、オレかなってはしゃいでた。

 

 

オレは聡を怒ろうとは思わなかった。こういうのもいいかなって思った。

 

 

その後、聡は夏美にフラれた。

ある日、聡はオレに変な商談を持ちかけてきた。

 

 

聡 「なぁ、すげーいい物が手に入りそうなんだ。」

聡 「お前、3000円で買わないか?」

オレ「すげーいい物ってなんだよ?」

聡 「誰にも言うなよ。」

オレ「……あぁ」

聡 「妹のパンツ」

オレ「……いらない」

聡 「なぁ、頼むよ買ってくれよ。オレ今月ピンチなんだよ。うちの妹そこそこかわいいぞwwwww」

 

聡は若干変態だった。

 

2年になって聡とゲーセンに遊びに行った時、

 

同じ学校の制服の奴(2人)が他校の奴(5人)に絡まれている事があった。

 

 

オレはあんまり関りたくないと思った。

 

でも聡は違った。その場に突撃して行った。

 

オレはやれやれと思いながらついていった。

 

 

聡  「そろそろ勘弁してやれよ。」

雑魚A「なんだテメー」

雑魚B「おめーら、痛い目にあいたくなかったら関らない方がいいぜwwwww」

雑魚C「……もしかしてあんた北中の聡くん?????」

聡  「あぁ、で、そろそろ勘弁してやってほしいんだけど。」

雑魚共「!!!!!」

 

雑魚共は愛想笑いを浮かべながら去っていった。

 

 

ちなみに、聡は長身で、空手の有段者、北中ではかなり有名だったらしい。

 

でも格ゲーは弱い。

 

 

学校の制服の奴(2人)は1年の後輩だったらしい。

 

すごいお礼を言われた。オレは何もしていないのにオレにもお礼を言っていた。

 

人助けも少しいいかなと思った。

 

 

 

 

ある日、聡が不良の先輩に呼び出された。

 

足手まといになるかと思いつつ、心配だったからオレもついていった。

 

聡は来ない方がいいぞと言っていたけど。

 

 

そこには3年の不良共が10人くらいいた。

 

 

不良A「おまえが聡か、今年からオレが頭取ってるから調子に乗るんじゃねーぞ。」

不良B「ワビ入れたら何もしないでやるからよ、ワビいれろや。」

 

 

オレはケンカになるのかと少し身構えていた。

 

 

聡  「……すいませんでした。以後気をつけます。」

オレ 「( ゚д゚)ポカーン 」

 

不良A「……お、おぅ。」

 

聡  「失礼します。」

オレ 「し、失礼します。」

 

その後、聡に聞いた。

 

 

オレ「お前よく何もしなかったな。」

聡 「オレ平和主義wwwww」

オレ「オレはてっきり、聡はああゆうやつらが嫌いなんじゃないかと思ってたけど。」

聡 「不良同士は勝手にやらせとけばいいんじゃね。関わるのめんどくせー。」

オレ「でもゲーセンで後輩助けただろ。」

聡 「弱い者いじめは嫌いだ。」

 

 

聡は尊敬できる人間なのかもしれない。そう思った。

 

聡はカラオケが好きだった。

 

だからよくカラオケに行った。

 

ある日、2人でカラオケに行くことになった。

 

 

聡 「裕也、オレのライブを聞いてくれーー!!」

オレ「わかった。じゃあその後オレがライブをしよう。」

 

 

結局2人でカラオケに8時間いた。

 

2人ともバカだった。

 

 

 

聡とオレの家は少し遠かった。

 

だから、週末はどちらかの家に泊まる事も多かった。

 

朝までゲームをやったり、他のメンバーを集めて麻雀なんかもした。

 

 

聡の家族とも仲良くなった。

 

両親はすごい良くしてくれた。ご飯も食べさせてくれた。

 

兄貴はカッコよかった。

 

妹はパンツ買わなくて良かったと思った。でもいい娘だった。

 

2年の時、クラスでこんな会話があった。

 

 

女子A「ねぇ、裕也君って1年の時とずいぶん印象変わったよね。」

女子B「そうそう、1年の時はちょっと話しかけにくかったよねー。」

オレ 「そうか?」

女子B「きっと、聡のバカがうつったんじゃないw」

聡  「ひでぇwwwww」

 

 

オレはそうかもしれないと思った。

 

オレにとって聡の存在は大きかった。

 

このままずっと聡とバカをやっていきたい。そう思った。

 

 

 

 

 

ある日、聡と進路について話をした。

 

 

オレ「なぁ、お前進路どうする?」

聡 「就職する。お前は?」

オレ「まだ決めてない。」

聡 「お前、頭いいんだから大学行けよ。」

オレ「大学ねー。でも大学でやりたい事なんかないしな。」

聡 「大学でやりたい事見つければいいじゃねーか。」

 

 

聡がまともな事を言った日だった。

 

その後、聡は県外の会社への就職

 

オレは地元の大学への進学が決まった。

 

卒業式の日、オレは聡に言った。

 

 

オレ「バカできるのもう終わりだな。」

聡 「お前、学生だからまだバカできるだろw」

オレ「いや、お前とバカできるのはもう最後だろ。」

聡 「大丈夫だって。オレが帰ってきたときにまたバカしようぜwwwww」

オレ「そうだなw」

 

 

こうして聡とオレのバカな高校生活は終わった。

 

 

 

聡が地元から出て行って3ヶ月程たった頃、

 

ハイテンションの聡から電話が来た。

 

 

聡 「裕也、聞いて驚け!!」

オレ「なんだよ」

聡 「彼女できたwwwww」

オレ「マジか!!!!! 相手は?????」

聡 「会社の事務の娘wwwww」

 

 

それから聡は延々と彼女との馴れ初めを語っていた。

 

うれしそうだった。

 

オレもうれしかった。でも、少しだけくやしかった。

 

さらに2週間後、変なテンションの聡から電話が来た。

 

 

聡 「なぁ、裕也」

オレ「なんだよ」

聡 「幸せってなんだろうな。」

オレ「は?????」

聡 「フッ、子供のお前にはわからないか……」

オレ「も、もしかしてお前……」

聡 「昨日彼女とヤっちゃったwwwwwwwwww」

オレ「!!!!!」

 

 

聡は事の詳細を全て報告してくれた。

 

なぁ、聡。報告してくれるのはうれしいんだが、

 

音まで再現しなくてもいいんだぞ。

 

 

 

 

 

それから7ヶ月程だった頃、聡から電話が来た。

 

 

聡 「……」

オレ「どうした?」

聡 「はぁ……」

オレ「……彼女にフラれたか?」

聡 「……なんでわかるんだよ!!!」

オレ「やっぱりか……」

聡 「やっぱりってなんだよ!」

オレ「夏美にフラれた時と同じテンションだったから。」

聡 「うがー。古傷をほじくるんじゃねー。」

 

 

その日はずっと聡をなぐさめていた。

 

そして、その1週間後事件が起きた。

 

聡が仕事で取り返しの付かない大きなミスをしてしまったのだ。

 

彼女との事もあり、集中していなかったのだろう。

 

聡のミスが原因で同僚が大怪我をした。

 

 

その日、聡から電話があった。

 

事故の詳細は聡から直接聞いた。

 

話終わった後、聡は泣いていた。

 

聡が泣く事があるなんて思ってもいなかったから、どうしていいかわからなかった。

 

ただ、無言の時間が過ぎていった。

 

 

 

自体は最悪の方向へ流れていった。

 

 

聡と上司は会社から処分を受けた。

 

 

そして、怪我をした同僚は障害が残ってしまった。

 

 

聡は会社を辞めた。

 

聡は地元に戻ってきた。

 

 

戻ってきた当初、見ていられないくらい落ち込んでいた。

 

 

オレはなんとか元気を出してもらおうと、

 

なるべく聡と一緒にいるようにした。

 

 

最初は何を言っても笑ってくれなかった。

 

でも、少しずつ笑ってくれるようになっていった。

 

 

3ヶ月程たったある日、聡が言った。

 

 

聡 「このまま何もしないのはまずいよな……」

オレ「もう大丈夫そうか?」

聡 「あぁ、バイトでもすっかなー」

オレ「そうか」

聡 「何かいいバイト知らないか?」

オレ「んー、そういえば大学の友達のバイト先で

新しい人募集してるって聞いたような気がするけど。」

 

 

こうして聡はバイトをする事になった。

 

 

 

 

バイト先には大学の友人の満がいた。

 

聡と満はすぐに打ち解けたようだった。

 

 

満とオレといる事で、大学の他の友人とも自然と仲良くなっていった。

 

この頃にはだいぶ元気になっているように見えた。

 

ただ、昔のような笑顔はまだ見せてくれなかった。

 

少しずつではあるが、聡は笑顔を見せるようになってきた。

 

 

そんな聡を見てオレは安心していた。

 

 

暗い聡なんて聡らしくなかった。

 

 

だから、聡がもっと笑えるよう努力しようと思った。

 

 

以前の聡に戻ってきたように思えた頃、 聡が意外な事を言ってきた。

 

聡 「裕也、夏美覚えてるか?」

オレ「あぁ、2人でフラれたよなw」

聡 「少し前に夏美に偶然会ってさ、それから何度か会うようになったんだけど、昨日告白された。」

オレ「へっ?????」

 

 

聡は少し困ったような顔をしていた。

 

 

聡 「オレなんかが誰かを幸せにできるのかな?」

 

 

そうポツリと呟いた。

 

 

 

 

オレ「オレなんかって……、お前だから幸せにできるんじゃないのか?

お前を必要としてくれる人がいるんだろ?

オレなんかなんて言うなよ。」

 

「オレだってお前のおかげで楽しくすごす事ができたんだ、オレにもお前が必要なんだよ!」

 

という言葉は気持ち悪いから言うのをやめた。

 

オレが告白してるみたいになるし……

 

 

でもいつか「ありがとう」という言葉は伝えよう。

 

そう思ってた。

 

聡 「そうか、そうだよな。オレを必要としてくれてるんだよな……」

 

 

そう言って聡は少し笑った。

 

 

結局、聡と夏美はつきあう事になった。

 

聡が夏美に会った時、夏美には彼氏がいたらしい。

 

でも彼氏とはうまくいっていないようだった。

 

聡は夏美の相談に乗るようになっていた。

 

 

自分に起こった出来事も夏美に話していた。

 

そうしてお互いの仲は深まっていった。

 

 

夏美の彼氏はあまり夏美にやさしくなかったらしい。

 

やさしい聡に惹かれたのは必然だったのかもしれない。

 

 

そして夏美は彼氏と別れ、聡に告白した。

 

 

 

 

 

それからの聡はどんどん明るくなっていった。

 

以前の聡に戻っていた。

 

 

オレは聡に「女ができたら急に元気になったなw」と悪態をついていた。

 

少しだけくやしい気持ちもあったが、聡が以前の聡に戻ってうれしかった。

 

またバカができる。そう思うと楽しさがこみ上げてきた。

 

それからよく聡と夏美ののろけ話を聞くようになった。

 

時々3人で遊ぶこともあった。

 

聡は楽しそうだった。

 

それからしばらくして聡が言った。

 

 

聡 「オレ、ちゃんと就職する。」

オレ「どうしたんだよ急に。」

聡 「夏美との事ちゃんと考えたいんだ。」

オレ「え? 結婚する気なのか???」

聡 「いや、まだ何も決めてないけど……

フリーターじゃ先の事考えられないだろ?」

オレ「まぁ、そうかもなー。」

聡 「だからちゃんと働く。」

オレ「お前、夏美の事本気なんだな。」

聡 「まぁな。」

オレ「良かったな、夏美に再会できて。」

 

それから聡の仕事探しが始まった。

 

オレはすぐに見つかるだろうと思っていたが、現実は甘くなかった。

 

 

聡は懸命に仕事を探してた。

 

それでもなかなか決まらなかった。

 

いい加減決まらなすぎだろうと思い、聡に聞いてみた。

 

 

 

 

 

オレ「なんでそんなに面接で落ちまくるんだよ。」

聡 「前の会社の話のせいじゃないか?」

オレ「前の会社の話って…… お前面接で話しちゃってるわけ???」

聡 「あぁ。」

オレ「なんでそんな自分に不利になるような事わざわざ言うんだよ。」

聡 「隠したまま働きたくない。」

 

 

聡らしい理由だと思った。

 

しばらくしてやっと聡の就職が決まった。

 

前の会社の事を知った上で採用してくれたようだった。

 

満の親父さんがいる会社だった。

 

聡の就職が決まった日、みんなでお祝いをした。

 

 

聡、夏美、満、オレ

 

 

朝までバカ騒ぎをした。楽しかった。

 

聡と夏美が付き合い始めて4ヶ月がたった。

 

お互い幸せそうだった。

 

 

そんな時、聡から呼び出しがあった。

 

そこには夏美もいた。

 

 

聡は神妙な面持ちでこう言った。

 

 

聡 「オレ、夏美と結婚する事にした。」

 

夏美は泣いていた。

 

幸せな報告のはずなのに、なぜか空気が重く感じられた。

 

 

 

 

 

オレは聡の次の言葉を待った。

 

聡 「夏美に子供ができた。」

 

しばらくの沈黙の後。

 

聡 「オレの子じゃない。」

 

聡がそう言った時、夏美は声を出して泣いた。

 

オレは聡が言っている事の意味がわからなかった。

 

そして、その事を口に出していた。

 

 

オレ「なんなんだよそれ、じゃあ誰の子供なんだよ。

なんでそれで結婚なんだよ。意味わかんねーよ!」

そして聡は静かに話し始めた。

 

聡の話の内容はこうだった。

 

 

・夏美は元彼にしつこくつきまとわれていた。

・夏美は拒絶していたが、強引に肉体関係を迫らた。

・無理矢理押倒され、暴力も受けた。 ・その時写真を取られた。
・元彼に脅され、拒否できない状態が続いた。
・子供が出来た事を伝えると、逃げるように去っていった。
・聡とは肉体関係は無かった。
・夏美は聡と別れようとしていた。
・そして、夏美は子供を生みたがっている。

 

 

オレは混乱していた。

 

こんな話を聞いてすぐに理解できるほど大人ではなかった。

 

 

そしてこんな事を言っていた。

 

 

オレ「何で堕ろさないんだよ!

そんな奴の子供生む必要ないだろ!!

子供なんてまた作ればいいじゃないか!!!」

 

 

今思えば最低の言葉だったと思う。

 

無知で浅はかな子供の考えだ。 殴られてもおかしくなかったと思う。

 

 

 

 

でも聡は大人だった。

 

オレを諭すようにこう言った。

 

 

聡 「堕ろすなんて簡単に言うなよ。

堕ろすって事は夏美の子供を殺すことなんだぞ。

お前は好きな人の子供を殺せるのか?」

 

 

オレは何も言えなかった。でも納得もできなかった。

 

聡は続けてこう言った。

 

聡 「オレ達はこれからずっと嘘を言い続けて生きていかないといけないと思う。

オレ達にとってそれはすごく辛い事だ。

だから、お前だけには知っておいてほしかった。

お前には嘘をついていたくなかった。

オレだって完全に整理できてるわけじゃない。

でも、もう決めた事なんだ。」

 

長い沈黙が続いていた。

 

夏美はずっと泣いていた。

 

そして、オレはこう言った。

 

オレ「すまない。少し1人で整理したい。

誰にも言わない事は約束する。

お前らを応援したい気持ちもある。

でも少し時間がほしい……」

 

 

オレはその場を去った。

その後、聡と夏美の結婚が決まった。

 

 

お互いの両親への説得は大変だったらしい。

 

若い二人のデキ婚だから、反対も多かったようだった。

 

それでも聡は必死で周りを説得していた。

 

夏美を幸せにしてあげたいと言っていた。

 

 

オレも2人の力になってあげたいと思うようになっていた。

 

 

 

 

周りの理解を得られるようになり、2人はみんなに祝福されていた。

 

聡と夏美は笑顔だった。

 

 

オレはその様子を不思議な感覚で見ていた。

 

 

この世界には表と裏の世界があるのだろうか。

 

どこからが表でどこからが裏なのだろう。

 

子供の世界は1つで大人の世界は2つあるのだろうか。

 

オレは子供で、聡は大人なのだろうか。

 

 

そんな事を考えていた。

 

夏美が妊娠して5ヶ月がたった。安定期といわれる時期だ。

 

夏美はつらそうだったつわりも終わり、体調も良さそうだった。

 

 

そんな時、聡から電話があった。

 

 

聡 「夏美が流産した。」

 

 

オレは驚いた。でも少しだけほっとする気持ちもあった。

 

これで聡の苦しみが軽くなるのではないかと思った。

 

 

オレ「大丈夫か?」

聡 「オレは大丈夫。でも夏美が……」

 

夏美は子供を失った事を受け入れられずにいた。

 

体の傷は癒えても、心の傷は深かった。

 

流産をしたのは自分のせいだと、自分を責め続けていた。

 

 

聡に何度も「赤ちゃんはどこへ行ったの?」と尋ね、

 

「赤ちゃんを返して!」と泣き叫ぶ日々が続いていた。

 

 

聡はそんな夏美を抱きしめる事しかできなかった。

 

 

 

 

夏美が落ち着いてきた頃、夏美に会いに行った。

 

それまで、聡に会わない方がいいと言われ、夏美には会っていなかった。

 

オレはどんな顔で会ったらいいかわからなかったが、

 

以前と同じように接する事にした。

 

夏美は少しやつれているように見えた。

 

疲れた表情をしていたが、普通に話をしてくれた。

 

オレはなるべく明るい話題にしようと思い、大学での出来事を話していた。

 

 

その時、なんとなくつけていたTVがCMに変わった。

 

紙オムツのCMだった。

 

 

夏美「嫌……、嫌……、赤ちゃん……、返して……、私の赤ちゃん……、

返して……、返して…、返して…、

いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、

返して、返して、私の赤ちゃんを返して、

連れて行かないで、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」

 

 

何が起こったのか解らなかった。

 

以前から聞いてはいたが、現実は想像を超えていた。

 

聡は夏美を抱きしめていた。

 

夏美「嫌、嫌、こっちに来ないで……、

触らないで……、

嫌……、

暴力はやめて……、

嫌、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」

 

夏美には何が見えていたのだろうか。

 

夏美の目は焦点が合っていなかった。

 

 

聡は暴れる夏美をずっと抱きしめていた。

 

 

オレはただ見ている事しかできなかった。

 

夏美は実家で生活をしていた。

 

聡は仕事が終わるとすぐ夏美の家に行く日々を送っていた。

 

 

オレも時々様子を見に行ったが、2人とも疲れている様子だった。

 

オレは何もできない自分に苛立っていた。

 

 

 

 

そして……

満 「……」

オレ「おぅ、満。」

満 「……」

オレ「どうした? なんかあったのか?」

満 「……」

オレ「大丈夫か?」

満 「あのさ……」

オレ「ん?」

満 「聡、死んだって。」

オレ「……」

満 「……」

オレ「は???」

満 「……」

オレ「……」

満 「聡、死んだんだって。」

オレ「……」

 

その後、すぐに聡の携帯に電話した。

 

 

聡兄「……裕也君だよな?」

オレ「……え???」

聡兄「俺、聡の兄貴。」

オレ「聡兄さん……。聡、聡は!!」

聡兄「……今朝亡くなった。」

オレ「……」

聡兄「……自殺だった。」

 

 

目の前が真っ暗になった。

 

その後の会話は覚えていない。

 

 

聡兄は最後に「通夜の日程が決まったら連絡するよ」

 

 

そう言って電話を切った。

 

オレは何が起こったのか理解できないでいた。

 

それからしばらくして満がやってきた。

 

満も聡が自殺した事を知っていた。

 

 

その日はほとんど無言で過ごした。

 

満が帰った後、少し横になろうと思った。

 

 

全部夢オチでした。

 

 

そうなればいいなと思った。

 

 

 

 

 

ほとんど眠れないでいた。

 

少しだけ夢を見たような気がしたが、

 

何の夢だったかは覚えていなかった。

 

 

ふと携帯を見るとメールが来ていた。

 

 

差出人は聡だった。

 

 

—————————————————–

聡兄です。

 

通夜は○○日 18:00~ ○○で行う事になりました。

—————————————————–

 

 

夢オチにはならなかった。

 

 

こんな世界、無くなってしまえばいいのにと思った。

 

通夜に行った。たくさんの同級生が来ていた。

 

夏美はいなかった。

 

 

遺影は高校の卒業アルバムの写真だった。

 

なつかしいと思った。

 

 

通夜の最中、多くの人が泣いていた。

 

そんな中でも、オレは聡が死んだ事が信じられなかった。

 

通夜が終わった後、同級生の1人がオレにこう言ってきた。

 

 

同級生「聡が心療内科に通ってるの知ってたのに、オレは何も出来なかった……」

 

 

そう言って泣いていた。

 

 

オレはその事実を知らなかった。ショックだった。

 

 

なぜ知ってるのか聞いてみた。

 

 

同級生「オレも通ってるから……」

 

 

聡は誰にも言っていなかったのかもしれない。

 

 

夏美があんな状態だったから。そう思った。

 

聡の家族に挨拶をすませ、帰宅した。

 

あの場には長くいたくなかった。

 

 

涙は出なかった。

 

 

聡の家族には、明日の葬儀にも来てほしいと言われた。

 

 

葬儀には親族と少数の友人だけが参加した。

 

 

葬儀は粛々と進められた。

 

 

オレはずっと聡の遺影を見ていた。

 

 

 

 

 

そして最後の対面の時間がやってきた。

 

 

祭壇から棺を下ろし、棺が開けられた。

 

 

聡の妹の泣き叫ぶ声が聞こえた。

 

 

そこには聡がいた。

 

 

聡は苦しそうな表情をしていた。

 

顔色は血の気の引いたようなな青白い色をしていた。

 

 

オレは棺に近づき、そっと聡の顔に触れてみた。

 

冷たかった……

 

 

その時、初めて理解した。

 

 

あぁ、聡は死んだんだ。

 

そう思った瞬間、涙があふれてきた。

 

 

嗚咽を漏らしながら泣いていた。

 

聡、何で死んだんだよ。

 

何で自殺なんてしたんだよ。

 

 

オレ、お前のおかげで変われたんだ。

 

でも、お前には何もしてあげれてない。

 

ありがとうすら言えてないんだぞ!

 

火葬場についた頃には少し落ち着いていた。

 

最後の儀式が終わり。聡は炉に入れられ火に包まれた。

 

 

火葬は1時間程で終わった。

 

火葬中、オレは1人で外にいた。

 

人間の焼ける嫌な臭いがした。

 

炉から出てきた聡は、骨だけになっていた。

 

人間って本当に標本のようになってるんだなと思った。

 

 

そして骨上げが始まった。

 

 

家族から順番に、2人1組で骨壷に骨を入れていった。

 

聡の妹は骨を拾えないでいた。

 

結局聡の兄の持つ骨に、手を添えているだけだった。

 

 

オレの順番が来て、聡の骨を拾った。

 

 

大きな骨だった。

 

 

箸の先から聡の重みが伝わってきた。

 

 

 

 

 

葬儀が終わってからの1週間は何もする気が起きなかった。

 

大学も休み、家にずっとこもっていた。

 

 

何で聡は自殺なんかしたんだろう。

 

何でオレに相談してくれなかったんだろう。

 

何でオレは何もできなかったんだろう。

 

何で……

 

 

疑問ばかり浮かんでいた。

 

その後、満に強引に引っ張られ、学校に連れてこられた。

 

 

学校は聡が死ぬ前と何も変わらない日常だった。

 

 

世の中、聡がいてもいなくても変わらないんだな。

 

人間の命ってなんだろうと思った。

 

 

大学という空間では、聡の死は別世界の出来事だった。

 

 

学校にいると、聡の家に行けば会えるんじゃないかという感覚にさえなった。

 

 

実際、聡の家に行った事もあった。

 

 

でも、現実をつきつけられるだけだった。

 

 

線香をあげて帰るだけだった。

 

49日が終わった頃、ようやく聡の死を受け入れられるようになっていた。

 

 

時間が心の傷を癒してくれたのだろうか。

 

それとも、痛みに鈍感になっただけなのだろうか。

 

 

よくわからなかった。

 

 

そして、聡が自殺した理由を知りたいという思いが強くなっていった。

 

 

聡の家族や友人に話を聞いて回った。

 

聡の良く行く店にも当時の様子を聞きに言った。

 

 

疲れた表情をしていたが、特に変わった様子はなかったとの事だった。

 

 

そして夏美に会いに行く事を決心した。

 

 

 

夏美とはあの日以来会っていない。

 

 

聡の自殺を知ってから、夏美と何かあったのではないかと思っていた。

 

でもその事実を知るのが怖かった。

 

 

だから他の理由を探していたのかもしれない。

 

 

そして夏美に会った。

 

 

夏美は病院のベッドの上にいた。

 

 

夏美はうつろな表情で天上を見ていた。

 

 

オレは夏美に話しかけた。

 

 

返事は無かった。こっちを見る事も無かった。

 

 

人形のようだった。

 

夏美の母親が話をしてくれた。

 

 

夏美が聡の死を知ったのは、聡が死んだ翌日の事だった。

 

夏美は、聡が家に来てくれない事を不安がっていたらしい。

 

電話をかけても繋がらない。メールをしても返事が無い。

 

 

夏美の両親は聡の事を話せないでいた。

 

聡の家族も夏美にどう伝えれば良いか解らないでいた。

 

 

でもいつまでも隠し通せるわけじゃない。

 

 

きっかけは夏美の友人からの電話だった。

 

友人は夏美への連絡をためらっていた。

 

でも夏美の事が心配で電話をした。

 

 

そこで夏美は知ってしまった。

 

 

事実を知った夏美は、気を失った。

 

 

そして、次に目を覚ました時には、心が空っぽになっていた。

 

 

夏美の母親は泣いていた……

 

オレは夏美の友人にも会った。

 

 

同級生だった。

 

 

疲れた表情をしていた。夏美の事を話すと泣いていた。

 

夏美がああなったのは自分のせいだと自分を責めていた。

 

 

聡や夏美に関る人間は、深い悲しみに包まれていた。

 

 

オレは聡の自殺の原因を調べる事をやめた。

 

 

きっと夏美の両親は何か知っているとは思っていたが、

 

聞くべきじゃないと思った。

 

 

原因を知りたいのはただの自己満足だ。

 

自分のせいでこれ以上他人に悲しい思いをさせたくなかった。

 

 

それに、あんな夏美の姿を見てしまったら、夏美を責める事なんかできない。

 

 

知らない方が幸せな事もある。

 

自分にそう言い聞かせた。

 

 

 

 

聡の一周忌がやってきた。

 

 

法事の後、夏美に会いに行った。

 

夏美は退院していた。少し良くなったようだった。

 

 

夏美の家に行った。

 

夏美はままごとのような事をしていた。

 

人形が2体あった。

 

少し大きめの男の子の人形と、小さな女の子の人形だった。

 

 

男の子の人形は「さとし」だった。

 

女の子お人形は「さとみ」だった。

 

 

「さとし」がお父さん。「夏美」がお母さん。「さとみ」が娘役だった。

 

 

夏美は幸せそうな顔をしていた。

 

オレは大学を卒業し、県外の会社に就職した。

 

 

仕事は忙しく、社会は想像以上に厳しい世界だった。

 

オレは必死で働いた。

 

 

辛い、辞めたい、そう思う事もあった。

 

 

そんな時は、聡の事を思い出していた。

 

 

楽しい事なんて何も無い生活。

 

 

働いて、食べて、寝る。

 

 

ただそれだけの生活だった。

 

聡の3回忌は仕事の都合で行く事ができなかった。

 

 

何の為に働いてるかわからなかった。

 

 

仕事やめて行けばよかった。

 

 

本気でそう思った。

 

 

あいかわらず、働いて、食べて、寝るだけの生活。

 

 

やりたい事なんて何も無い。楽しい事なんて何も無い。

 

 

給料を貰っても嬉しくなかった。金なんて必要なかった。

 

 

 

 

オレはいい社会人を演じていた。

 

 

上司にはよく働く若手を演じた。

 

先輩には素直な後輩を演じた。

 

同僚にはマジメな人物を演じた。

 

イライラする事は我慢した。

 

 

自分の言葉なんてなかった。

 

相手が期待している言葉を言えばうまくいった。

 

 

オレは何なんだろう?

 

 

そう考えていた。

 

 

オレは自分の事が嫌いだった。

 

 

何がしたいのかわからなかった。

 

人と接するのが辛かった。

 

 

そうして、生きる気力が無くなっていった。

 

まともに眠れない日が続き、症状はどんどん悪化した。

 

 

孤独だと思った。オレなんか必要のない人間だと思った。

 

 

そして「死にたい」と思った時、聡の事を思い出した。

 

 

それと同時に、聡が「自殺」を選択した理由が解ったような気がした。

 

オレに相談しなかった理由も解ったような気がした。

 

 

 

 

 

当時のオレは親のスネをかじって生きている学生だ。

 

働く辛さ、生きる辛さなんて何も解っていなかった。

 

 

たぶん聡は気づいてたんじゃないかな。

 

オレに相談しても何も解決しない事。ただ心配をかける事。自分の苦しみが伝わらない事。

 

今のオレが誰にも相談できないように、聡も相談できなかったんだろう。

 

 

きっと、相談されてもオレは聡を救う事はできなかった。

 

オレに相談してくれればと思っていたのは単なる驕りだった。

 

 

ずっと「なぜ……」と思っていた疑問が無くなっていた。

 

ネットの掲示板で自分の症状について相談した。

 

そこには、同じ症状で苦しんでいる人、過去に苦しんだ経験のある人、いろいろな人がいた。

 

 

そして自分は1人では無い事を気づかされた。

 

自分には家族がいる。友達がいる。仲間がいる。

 

オレが死んだら悲しむ人間がいる。

 

そんな人が1人でもいる限り、死を望んではいけないと思った。

 

 

自ら死を選ぶことは、オレに関ってる人間を苦しめる事になる。

 

それは聡が教えてくれた事だった。

 

 

その後、心療内科に行き睡眠薬を貰った。

 

幸いオレの症状は軽かったらしく、少しずつ改善していった。

 

 

7回忌の時、聡の遺影の前でいろいろ報告した。

 

 

鬱になった事。聡の苦しみが解った事。

 

世の中には同じように苦しんでいる人が沢山いる事。

 

今はだいぶ良くなった事。

 

 

そして、最後にこう報告した。

 

 

 

オレ、まだお前のところには行けない。

 

 

自分が生きる理由はわからない。

 

でも、死ねない理由があるから。

 

 

これから時間をかけて生きる理由を探してみるよ。

 

もしかして理由なんて無いかもしれないけどな。

 

 

精一杯あがいて生きてみる。

 

 

じゃあ、またな。

 

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